国産と輸入品のどこがどう違うの?

加熱殺菌しているかどうかが最大の違い

ミネラルウォーターボトル

スーパーやコンビニエンスストアに並んでいるペットボトル入りのミネラルウォーター類は、一部の輸入のミネラルウォーターを除いて、国産のものはほとんどが加熱殺菌処理されています。

それは後述する農林水産省の「ミネラルウォーター類の品質表示ガイドライン」の内容や、昭和61年まで、食品衛生法でミネラルウォーター類の加熱殺菌が義務づけられていたという事情があります。

その後、製造技術の進歩と、消費者の好みの変化に対応して、食品衛生法の加熱殺菌を規定した部分が改正され、主として欧州方面から非加熱ミネラルウォーターの輸入も可能となりました。

欧州では加熱殺菌している水を「ミネラルウォーター」とは呼びませんし、加熱殺菌した水は本来の水の組成とは違ってしまって、活性を失っているので、価値はないと考えられています。

日本人はあまりにも安全性を求めるがあまり、何でも殺菌、除菌という風潮があるため、加熱殺菌していな水に衛生面で不安を持つ消費者は多いですね。

また、メーカー側の事情として、殺菌処理することで保存性も高まることと、生産効率がアップして、製造コストも削減できるというメリットがあり、多くの国産ミネラルウォーターは加熱殺菌されています。

これが国産ミネラルウォーターと輸入ミネラルウォーターの大きな違いです。

では、なぜ日本のミネラルウォーターの多くが加熱殺菌していて、欧州を中心とする輸入ミネラルウォーターの多くが非加熱なのでしょうか。

そこで、日本と欧州でミネラルウォーターや飲料水に対する意識の違いが生じた背景について掘り下げて考えてみます

日本のミネラルウォーター類の品質表示

まず、日本国内で販売されているミネラルウォーター類の品質表示について確認してみましょう。

日本ミネラルウォーター協会の公式HPで確認できる、農林水産省の「ミネラルウォーター類の品質表示ガイドライン」によれば、ミネラルウォーターの表示は下記の4つに分類されています。

表示品名 内容
ナチュラルウォーター 浅井戸からポンプ等により取水した地下水
ナチュラルミネラルウォーター ナチュラルウォーターのうち、ミネラル分を含んだ地下水を原水としたもの。
ミネラルウォーター ナチュラルミネラルウォーターを品質を安定させるためにミネラル成分の調整、ばっ気(空気にさらして浄化すること)複数の採水地のナチュラルミネラルウォーターを混ぜたもの。
ボトルドウォーター・飲用水 ナチュラルウォーター、ナチュラルミネラルウォーター、ミネラルウォーター以外のもの。

引用元:ミネラルウォーター類の品質表示ガイドライン

この品質表示基準は、国産、輸入品にかかわらず、日本国内で販売されるミネラルウォーター類すべてに適用されるものですが、加熱殺菌の有無については特に表示義務はありません。

では、EU諸国でのミネラルウォーターの品質基準はどうでしょうか

EU諸国のナチュラルミネラルウォーターの品質基準

EU諸国でのミネラルウォーター、特にナチュラルミネラルウォーターの品質基準を簡単にまとめると、下記のようになります。

  • 公的機関の審査と承認が必要
  • 健康にプラス効果があることが科学的に証明されていること
  • 水源地の厳格な管理と環境保全がなされ、水そのものが安全で成分も安定していること
  • 地下の水源から空気に触れることなく採水し直接ボトル詰めしていること
  • ミネラルバランスがよく成分や温度、他の性質が安定していること
  • 殺菌処理、ミネラル添加などの人工的な処理をしていないこと
  • ボトリングする前にほかの容器に入れないこと

EU諸国でのミネラルウォーター類の品質基準では、殺菌処理やろ過、ミネラル添加したものは「プロセスドウォーター」と呼ばれ、人の手を加えた加工した水であり、ナチュラルではないとされているのです。

水源から採水した水に一切手を加えてはいけないというのが基本的な考えとなっています。

日本では、天然水も加熱殺菌することで安全性が高まると無意識に感じている消費者が多いのですが、非加熱の天然水を製造するには、水質はもちろん、水源の環境や工場の製造ラインの状況なども含めた、保健所の厳しい審査をパスして、非加熱処理の許可を取得する必要があります。

言い換えれば、非加熱の天然水は「加熱殺菌の必要がないほど安全性の高い水」であり、自然の湧き水そのままの非常に高品質な水といえます。

非加熱の天然水は、水本来の活性が生きているという点で、さまざまな健康増進作用もあるといわれています。

水源に対する意識の違い

日本では現在でも加熱殺菌した水が安全な水で、加熱していない生の水は細菌やウィルスの心配があるという理解をされる方が少なくありません。

例えば、乳幼児には水道水を一度沸騰させてから冷ました湯冷ましや、ミルクを作る際に使う水も沸騰させたものを使っているという方がいます。

根本的な部分での欧州と日本での水に対する考え方の違いは、「水源地の保全」という意識の有無です。

原水の安全性の確保という意味だけでなく、水そのものの成分や組成を変えないために「採水地の自然環境を厳重に保全管理する」

これが欧州の水に対する基本的な考え方なのです。

日本では、河川や湖沼をはじめとする水源地の保全と管理の所轄官庁は、国土交通省(旧建設省)と環境省ですが、高度経済成長期には列島改造ブームもあって、水源地の保護という視点はほとんどなく、工業用水の確保と人口増による水需要の増加に対応するため、ダム建設や河川の改修工事に力を入れてきました。

また、水道法および水道事業を所管する省庁は厚生労働省であり、水道政策の基本として、基準に合致した安全な水を安定的に供給するということにあり、水道事業者には水源地を保護するという意識はなく「安全な水は浄水場で作り上げるもの」という政策が取られてきました。

こうした事情の違いから、欧州ではできるだけ手を加えていない水に価値を認め、日本ではしっかりと処理した水こそが安心という意識が形成されたのです。

日常的に非加熱天然水を楽しむならウォーターサーバーが便利

こうした事実に目を向けると、国産のナチュラルミネラルウォーターも、本当の意味でナチュラルなのか疑問に思えてきますね。

国産のできるだけ手を加えていない正真正銘のナチュラルな水というのは、スーパーやコンビニエンスストアの店頭に並ぶことはほとんどありません。

非加熱処理の許可を取得する必要があるため、生産量も限られること、また、保存性の問題もあり、一般の店頭では販売しにくいということもあります。

ウォーターサーバーなら、非加熱の天然水を扱っている業者も増えてきていますから、非加熱の新鮮な天然水を日常的に楽しみたいという方にはとても便利なサービスです。

このページの先頭へ